はじまりへの旅


単純にキャンプに行きたくなる。
そんな映画でした。

消費社会や文明を拒絶し、深い森の中で独自の教育方針を掲げ、6人の子供を育てる偏狭なお父さんのお話です。ぶっとんでます。火の起こし方、身体の構造、SEXの仕組み、食べることについて等々。自然に回帰した暮らしの中で、あらゆる物事を原点まで立ち戻り本質的に理解させようと徹底します。読書も古典ばかり。まさにボーイスカウトの毎日版。スマホ漬けの僕らに一番足りないやつです。

娘に読書の感想を聞いた際に出てきた「興味深い(インタレスティング)は禁止」というフレーズは印象的でした。「興味深い」で終わらせず、その中身を掘り下げて自分の言葉で語らせるんです。これは本当に子供時代に身につけておいた方がいい習慣ですよね。

馬齢を重ねた現在でも「やばい」「ハンパない」「なるほどね〜」と機械的な言葉でその場を濁してしまいがちな自分を猛省しました。やばい。脳みそが減る。

とにかく、子供と向き合うことを逃げずに関与しようとするヴィゴモーテンセンの姿には目頭が熱くなるばかりでした。

ただ、ヴィゴお父さんのやっていることや言っていることは、正しいし立派なんですが、正しすぎて立派すぎて、やっぱり間違っているんですよね。本人も感づいていきますが。ショーンペン大先生の「イントゥーザワイルド」と似通った題材で最終的に辿り着く真理もだいたい同じです。どんなに研ぎすまされた思想を獲得したとしても他者との関係性からは逃れられない。

月並みすぎる感想で穴があったら入りたいですが、両極の価値観の間で常にバランスを保ちつつ、時には右に寄り、時には左により、また真ん中を探り当てながら生きていくしかない。

マックや吉野家が好きな自分もいれば、無農薬の野菜も素直に美味しいと思うし。
東京の情報量満載な刺激も好きな自分もいれば、山奥でキャンプするのも大歓迎だし。
ミスチルやサザンが好きな自分もいれば、下北沢のハードコアバンドを聞く自分もいる。

マスでもありマイナーでもある自分の節操のなさを恨みつつ、そんな不確かさを素直に認めざるを得ないとも思うんですよね。思考停止が蔓延しがちな毎日で、たまにこの手の極端な頭の体操になる映画を観るのは大事だなと思いました。

全然関係ないですが、今回渋谷の映画館で見ましたが、素晴らしい映画を見た後に、すぐにガチャガチャと街の喧噪に飲み込まれて、電車に乗って帰るのもったいないですよね。もっと余韻に浸りたい。脳みそも活性化しているし。エモーショナルな気分だし。はあー。











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