スリービルボード


アメリカの田舎町で半年前に起きた少女の惨殺事件。その被害者で怒れる母親がさびれた3枚のビルボード看板を駆使して、隠れた犯人を徐々に追いつめ、遂には復讐に成功するー。

タイトルやあらすじから期待してしまうのは、そんなカタルシスに満ちたミステリーなんですが、蓋を開ければ、びっくり仰天。事件の本筋そっちのけで見事に物語が明後日の方角へ転がっていきます。それこそ「ファーゴ」を彷彿とさせる人間の暗部を揶揄した渇いた可笑しみ満載のブラックコメディーです。

間違いなく、トランプ政権とこの度の大統領選挙で浮き彫りになった、アメリカ社会に深く蔓延る「不寛容」と「偏見」に対する強烈な風刺としてこの映画は作られていて、アカデミー作品賞最有力なのも頷けます。

ミズーリ州にあるエビングという架空の田舎町という舞台設定なんですが、町のサイズ感や地域コミュニティの描き方など、その舞台を取り巻く演出が絶妙だったと思います。

警察署の目の前のビルに広告代理店のオフィスが入居していたり、署長のガンが町民全員の暗黙の了解であったり、息子が学校でいじめられたり。田舎町特有の「閉塞感」が否が応でも伝わってきて、「負の連鎖」を予感させるのに十分な設定でした。ゆえに病室で鉢合わせる例の名シーンも素直に入ってきます。そりゃ病院もみな同じ病院だよねと。

アメリカといえば、NYやLAの自由闊達なリベラルなイメージしか湧かない僕のような日本人にも、アメリカ中南部の現実が、ある程度の説得力を持ってズシリと伝わってきたので、生粋のアメリカ人がこの映画を観たらそれこそどんな感想を抱くのか、めちゃくちゃ興味あります。

あと、主役のフランシスマクドーナンドは言わずもがなですが、残念すぎる警官役を演じたサムロックウェルの仕事が見事でした。さすがに助演男優賞取って欲しいです。作品賞は内容がやや直球すぎてどうなんでしょうか。。

舞台にもなっても面白そうな映画です。








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