ブルーに生まれついて


最近の音楽ネタの映画ってだいたいハズレがないですよね。
「はじまりのうた」もよかったし。どれも1度栄華を極めたダメンズの主人公が転落して、そこから再生再起していくというお決まりのプロットですが、やっぱり感動しちゃいます。人間は「もう一度立ち上がろうとする人間の姿」に弱いものです。元来人間は弱い生き物だから、その弱さを包み隠さず、弱さを認めた上でそれを乗り越えようとする姿に深く共感するのだと思います。たぶん。

今回観たイーサンホークの怪演が光るジャズマンの映画も一応は再生を描いてはいるのですが、まったくハッピーエンドではない。如何せん痛みが残りすぎる。代償がでかすぎる。切ない余韻が延々と続く文字通りブルーな作品です。

ラストシーンが本当によかった。

再起がかかった大舞台。クスリに頼れば大切な人を失う。クスリに頼らなければ音楽の神様は降りてこない。音楽か恋人か、自分か他人か。今か未来か。マネージャーが語りかける言葉のチョイスもだいぶ洒脱です。普通あの立場にいたら焦りに焦って決断を押し付けてしまいそうですが。

一般的にというか社会的にはどちらを選ぶのが正解かは分かっていても、違う方を選んでしまう。孤独を選んでしまう。だからこそ万人には奏でられない切なく繊細な表現を獲得できたのでしょう。いつだって危なっかしさは色気と背中合わせです。

節目節目で必ずや降り掛かってくる「選択」の数々。いつも正解ばかりを選んでると無味無臭な人間になるし、いつもハズレばかりを選んでると破滅するし。当たり前ですが、過去にその人が取ってきた選択の積み重ねがその人の個性を築くんだなと。「人に歴史あり」ってそういうことだと思います。

それにしてもイーサンホークって息が長く、良作によく出演してますよね。
だいぶ飛躍するけど「いまを生きる」にも通底するものを感じたし。

よい映画でした。























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