SMOKE


恵比寿ガーデンシネマが閉館してK-POP専門のライブハウスみたいになったと聞いた時は、耳を疑いしばらく絶望しました。

親の影響で小学生の頃から映画が好きで、いつも本屋で雑誌「ROADSHOW」を立ち読みしては、よさげな映画を漁っていたのですが、よさげな映画は決まって恵比寿のガーデンシネマでやってました。本当です。そこに行くと、次回作のカッコいいパンフレットがたくさん置いてあって、今度はそのパンフレットを頼りに映画を漁るという好循環が僕とガーデンシネマの間には存在していました。本当です。当時、横浜線の十日市場という片田舎に住んでいた少年には、めちゃめちゃ背伸びした行楽でした。「文化の発信拠点」という言い方をよく聞くけど、当時のガーデンシネマは文字通りそれで、自分にとっては新しい世界や未知の領域との窓口でした。

そんなガーデンシネマがいつの間にやら復活してて、しかも名作「SMOKE」のリマスター版を上映しているというではないですか。これは久々に唸りました。ハートウォーミーな気分に浸りたがりな年の瀬にツボなセレクトをしてくるなーと。で、さっそく観てきました。

最初に観たのはビデオを借りて中学生ぐらいの時かな。トータス松本か誰かがラジオでオールタイムベストとしてこの映画を取り上げていたのを聞いて。それからDVDも買って、かれこれ何度も観てる作品なんだけど、34歳の現在観ると、また違ったセリフやシーンに感動するのが不思議で、本当に滋味深い作品だと再確認できました。

ブルックリンの一画にあるタバコ屋に集まる街の人たちの群像劇で、映画的な起伏のあるエピソードはほぼ皆無。登場人物それぞれが些細な痛みや過去を抱えていて、それが少しづつ交錯しながら、世代を超えて友情が育まれるという筋なんだけど、この手の映画はありそうでない。「SMOKE」ほどちょうど良い映画はないっすね。

昔「SMOKE」を観た後に、同じような映画が観たくて、ツタヤの「ヒューマン系」「日常たんたん系」と括られる棚を片っ端から漁ったりしたけど、記憶に残っている映画はあまりない。

描写が仰々しくなくて、間合いも絶妙で、セリフがウイットで、演技も激しぶ。

例えば、映画の狂言回し的に登場するラシード少年というのがいて、そのラシード少年が郊外のガソリンスタンドまで実の父に会いにいくという映画の一つの山場になるエピソードがありまして。素性を明かす場面で親子の激しいぶつかり合いに発展するんだけど、その後にすっとピクニックのシーンが入るところ。ここが最高。誰も何も言わないあの間合いが本当に「粋」で、この映画の佇まいを象徴しているシーンだと勝手に思っています。オギーが撮りためている写真のエピソードも憎たらしいほどじんわり響きますが。

やっぱりオギーとポールのような「大人」、オギーとポールのような「大人の友人関係」ってだいぶ憧れます。詮索し合わず、潤滑油として嘘を織り交ぜながら、互いの距離を縮めていく感じ。非常にカッコいい。一つの手本のような存在ですね。まあ、あれはハーヴェイカイテルの演技がそう思わせてしまうのだろうけど。

ガーデンシネマ様。年末に、頃合いを見計らった旬な映画のセレクトをして頂きありがとうございます。映画愛好家一同、恵比寿にて、また素晴らしい作品に出会えることを楽しみにしております。




















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