原口元気


いまどき雑誌なんて買わないよね!とは言っても、切り口の鋭さと濃度の高い取材力で、お金を払ってでも、塊として読むことに価値を感じる雑誌もやっぱりあります。

愛読書である国民的スポーツマガジンNumberのことです。

W杯最終予選、UAE戦の敗戦後に臨時増刊した前号の「本田を超えろ!」という問題提起から、最新号の「日本代表、新たなる希望。」までの展開は本当に見事でした。コンビニで唸りました。

観察者という立場に甘えることなく、筆を武器に選手やチームに檄をとばし、若手の闘争心を呼び起こそうという強い念が誌面からビシビシと伝わってきました。少なからず代表のパフォーマンスに影響を及ぼしたと思います。ペンの力あなどるなかれですね。全体的にサッカー愛好家の気分を深い部分で捉え代弁してくれているので、しっかり追体験できて激闘にしばらく酔いしれることができます。600円が安いぐらいです。

で、最新号のコピー「新たなる希望。」とは、そのまま「原口元気」のことを指していると理解して間違いないでしょう。

2010年南アフリカW杯を前に中村俊輔を本田圭祐が超えたように、本田圭祐を原口元気が超えていくような予感がします。それだけのパーソナリティーを感じさせる最終予選のパフォーマンスでした。

上手いドリブラー、アタッカーなら昔から日本にたくさんいます。宇佐美、武藤、乾、南野、香川しかり。ドイツに行くまでは原口も同列の選手だったと思いますが、ドイツに行ってからは自分の課題を謙虚に受け入れ、完全に一段上のステージに登り詰めた感がありますね。

今の原口の最大の持ち味を一言で表すと「攻守に90分間途絶えることがない漲る闘志」だと思います。ボールを取られた後、動物のように相手に食らいつくさまだったり、カットインからシュートに持ち込む時の目つきといい、観ている方が身震いするようなプレーの連続です。「闘志」はメンタル的な技術なので身につけてしまえば、好不調の波の影響を受けにくいのと、戦うマインドを周囲の選手に伝播できるのが強みです。岡崎がレスターにもたらしたものも同じだと思います。

岡崎のように過去にも「闘志」を長所として活躍する選手もいましたが、決まってボール技術が低い選手ばかりでした。短所を頑張りで補おうという発想。ただ、原口の場合はナチュラルボーンな天才サッカー少年。そういう選手が「闘志」を身につけたとき、大概ブレイクスルーが起きるような気がします。パサーとして美学を感じていた本田圭祐がオランダ2部で点取り屋として自己変革を遂げた時のように。このまま原口が成長を続ければ「速さ」「上手さ」「強さ」が揃った極めて現代的なアタッカーになれるのではないでしょうか。

元日本代表監督だった加茂周さんがいつかのJリーグ中継の解説の時にぼそっと言っていたことを思い出しました。

「観客が本当にみたいプレーは、実は華麗なフェイントや巧みなパス回しじゃないんですよ。最後までボールにくらいつこうとする必死なプレーに人はやっぱり感動するんです。そういうプレーを続けているとスタジアムに観客が増えてくるんです」

本当そうなんだなーと原口元気のプレーを観ていて思います。
いちいち心を打つし、ずっと観ていたい気持ちになります。
どうかこのまま日本サッカーの新しい時代を切り開いて下さい。





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