noma


nomaのドキュメンタリーがやっていたので新宿で観てきました。
よい作品でした。当然nomaのプロモーションムービーでもありますが。

実際に食べたことがないので、料理については視覚的にしか分かりませんが、シェフの情熱と信念、スタッフの雰囲気や生産者との関係など、レストラン全体が纏う哲学のようなものは高濃度で伝わってきます。

なんせ4年間かけてカメラが密着したそうですから。
撮る方も撮られる方もすごい執念ですよね。
監督がnomaとの信頼関係をしっかりと構築されていたのでしょう。

nomaという名前や料理のイメージが神格化されすぎていたせいか、映画を観る前までは、どうせ主人公のシェフは完璧主義で中性的な気取ったアーティストのような人物だと先入観を抱いていました。ところが実際は違いました。

レネレゼピという人物は、理想を追究する無垢な心と俗世間への虚栄心で板挟みになって、危なっかしい感じの人間臭いオトコでした。ミシュランや格付けランキングなど業界が作り上げた権威との向き合い方に2転3転する様子が、その葛藤をリアルに描いていたと思います。ここ、結構、観客的には混乱します。笑。

印象に残ったのは、月並みですが、レネレゼピの「言葉」です。

コンセプトを組み立てる時。
メニューを仲間と開発する時。
部下の試作品を食べた時。
生産者との取引の時。
授賞式のスピーチの時。

この人、料理人?職人?ということを忘れるぐらい、具体的なビジョンやイメージを自分の言葉で明確に力強く伝えておりました。「男はだまって背中と作品で語る」とは真逆のアプローチです。

周囲からの期待や組織が膨らむにつれ、トラブルも増える。
きっと乗組員たちの気持ちを束ねていくには、拠り所になる強い言葉が必要で、先導役のレネレゼピは努めて言葉に敏感でした。

というか、レネレゼピという料理人が「言葉」でnomaの世界観を表現できる人物であったからこそ、このドキュメンタリーが成立しているともいえます。

料理の映像だけではグルメドキュメンタリーは10分も耐えられない。笑。
だって食べられないですから。

「料理」だけでなく「言葉」に注目して観るのもオススメの映画です。

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