ネイマール


試合前から絶対に6点取ること(キックオフ当初は4点)が義務づけられている状況で本当に6点取ることの難易度をどう表現したらいいのでしょうか。経験不足の小生では圧倒的に語彙が届きません。奇跡という言葉では控えめなぐらいです。

LIVE観戦中の「後半ロスタイムの逆転弾」の味は極めて中毒性が高く、それを欲するが故に健全な日常生活のリズムが破壊されることを承知で、深夜のスカイパーフェクTVにかじりつくわけですが、これ以上のカタルシスを得る試合に出くわす可能性はほぼないので、今期のフットボール観戦はこれにて打ち切りにしてもいいぐらいです。

教科書や専門書等に掲載されていないパスコースを開発したイニエスタの魔法はそろそろ人間界から追放されてもおかしくないレベルで冴え渡り、セルジロベルトのダイビングボレーは「ジョホールバルの岡野」並の賞味期限がありそうそうだし、お馴染みの殺人的な嗅覚で先制点を奪ったスアレスも後世にわたり賞賛されて然るべきでしょう。

とはいえ、今回の特大感動巨編映画の主役は当然にネイマール選手ですよね。
栄枯盛衰が歴史の理ですが、フットボールの世界も同じ。ロナウジーニョ期の後にメッシ期が訪れたように、メッシ期の次はネイマール期がすぐそこでスタンバイしていることを圧倒的なプレゼンテーションで世界中のフットボールファンに提示しました。

サントス時代やバルサ入団1年目〜2年目あたりまでは、テクニックに溺れたサーカス系のサッカー選手にしか見えず苦手な選手でしたが、最近のネイマールは、試合全体の文脈の中に自分のドリブルを落とし込めるようになり、仕掛けも早くシンプルでより効果的な選手に変貌したと思います。特に高度な戦術と戦術の噛み合わせの妙が勝負の行方を左右する傾向が強くなってきた昨今のサッカーの試合で、ネイマールのような不確実性はどの監督も重宝したい才能でしょう。

ほぼ同じ割合で縦にも横にも抜けるドリブルの方法論の数は間違いなく世界一。
普通のドリブラーよりも仕掛けが若干しつこい(長い)ので、相手DFが一枚では対応できず最低二枚を割く必要があるので、逆サイドやゴール前に数的優位の状況を創造できるのも有り難い。(毎試合必ず披露する、ピッチを横切るようにドリブルで逃げるやつ、あれ本当相手からしたら嫌だろうな〜)

何より感心するのが、毎回対峙するDFに対して逃げずに1対1を仕掛けるメンタリティーです。ボールをロストすることは攻守が切り替わるだけでなく、監督やチームメイトからの信用も失う行為なのでリスクが大きいので、責任の所在が明確なドリブルという行為は一番難易度の高いプレイに該当するのですが、ネイマールの場合は躊躇することなくドリブルを選択し、相手に立ち向かいます。「この局面は自分が背負う」という覚悟が美しくすらあります。

セルジロベルトのロスタイム弾につながったアシストも、並大抵の選手なら絶対にあの局面で切り返しを入れることはできないはず。ミスを恐れない覚悟が技術を解き放ち、結果的にパリサンジェルマンのDF陣の足が止まり、感動的な結末へと導いたわけです。

精神的には未熟なところがありますが、このまま順調に成熟して、メッシ先輩の巨大すぎる背中を追い越してほしいものです。





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