20センチュリー・ウーマン



悩みや引け目もなく、才能や出会いに恵まれ仕事も恋愛も上手くいって、美味しいご飯ばかり食べて、毎日最高の気分、ビバ人生!!大塚愛ばかり聞いてます!

なんてテンション高くストレートに生き抜くとかあり得ないし、それはきっとフィクション。そう見える人がいたとしても、周囲からはそう見えているだけであって。

やはり大なり小なり不安やコンプレックスを抱いてるもので、それは得てして各自の家庭環境や青春時代の不完全燃焼だったりに源泉があったりして、大人になってもその呪縛からは解き放たれず、拗らせたり、凝り固まったりするものですよね。

そんな本来は脆弱で不安定でごちゃごちゃの感情の持ち主である我々人類を、いつも優しく肯定してくれるのがマイクミルズ監督であります。

前作「人生はビギナーズ」では末期ガンを患いながらもゲイであることを公言しウルトラポジティブな日々を送る父親を通じた人生讃歌。今作はスタイリッシュでありながらも孤独で臆病な母親とその母親を取り巻く破天荒な女性らを通じた人生讃歌になっています。

不完全でも懸命である身近な他人と関係し合いながら自分を確立していく主人公の姿に必ずや前向きな気持ちになれます。

こういう激的/劇的じゃない些細な日常や人間関係の断片をよく映画に仕立てることができるなと毎度感動します。ストーリーらしきものはあるようなないような。恋愛も事件も成功も出てこない。人生のハイライトからは間違いなく除外されるであろう日々が対象。退屈ではあるのですが、観る側の記憶と重なる描写やシチュエーションが多く、故にグサリと刺さるセリフが連発されます。

構図はもちろん色味や光の使い方が綺麗で、編集の遊びも楽しいので、飽きることはないです。むしろ何度でも見返したいなと思わせるスルメムービーです。

スマホで気軽に他人の輝かしい生活が可視化され、それはそれで愉快な反面、重苦しい劣等感やヤッカミの渦が漂う昨今。ブラックフラッグのようなマッチョになりきれず、トーキングヘッズ並にナイーブになってしまう我々の背中を押してくれる名作だと思います。

ぜひ、映画館で。













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