パターソン
テクノミュージックを聞いていると、反復されるリズムに次第に耳が慣れ、そこに段々と音数が重ねられていくことで高揚感を得ることってありますよね。。
ジムジャームッシュ巨匠の新作がまさにそんな感じでした。
「ありふれた日常にこそ美しさがある」って実は表現者にとっては誰もが手を出してみたくなる魅惑的なテーマだと思うのですが、経験の浅い学生さん等がトライすると、悲劇的なほど観客を置き去りにする自己完結系の作品に仕上がる危険性を孕んでいると思うのですよ。お口ポカーン系ね。
そこはさすがは熟練工でした。
2時間飽きさせることなく、その独自の世界に無理なく観客を引きづり込んでくれます。
同じ構図、同じシーンの順序を執拗に守ることで、観客に一定のリズムを植え付け、そこから些細なズレやノイズを段階的に差し込んでくる演出がまるで音楽のグルーブのようでした。こちらを夢心地にさせてくれます。
特に律儀なバス運転手の主人公とは対象的な奥さんの存在が印象的でした。
情報に敏感で、時に観客を苛立たせるぐらいに、アクティブで好奇心旺盛な彼女の存在そのものが、繰り返される主人公の日常にささやかな彩りを与え、彼の詩作の原動力になっているのがよく伝わってきて、なんだか2人の関係性にホッコリします。
永瀬パイセンのシーンは缶コーヒーのCMみたいでだいぶ唐突でしたが、これもジャームッシュの遊びだと思えば結局は愛らしいです。パターソンという街でパターン化された生活を送るパターソンという名前の主人公という設定が既に遊んでますよね。。
今年度の「家でもう一回お酒飲みながら適当な感じでダラダラ観たい映画」ナンバーワンです。
おすすめです。
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