ポルト
ポスターのビジュアルが好みすぎて昨年から頭の片隅に引っ掛かかっていた映画が横浜は最古の名画座「ジャック&ベティー」で上映していました。こっそりと見てきました。
夜の都会を佇む孤独な後ろ姿とそれを吸い寄せる温かいネオンサインが物語の始まりを予感させるのには十分ですよね。異国の地での男女の偶然の出会いとその忘れられない一夜を、男女双方の目線から描いたいわゆる「ビフォアサンライズ」直系の作品です。
2人が惹かれ合う偶然の描写にうまく感情移入できなかったのと2人を狂わしたであろうポルトの美しい街並をもっと堪能したかったという欲求不満は残るものの、切なさ成分がギュッと凝縮され、やるせなさが体内にこびり付く、良作ではあります。
その一夜に永遠にすがり続けたい男子と、その一夜を素敵な一夜として完結させたい女子と。同じ記憶を共有しても、時間の経過とともに広がる意味合いのズレはただただ痛々しかった。まあ、だからこそ瞬間的な美しさが際立つわけですが。川辺の部屋で2人で朝を迎えるシーンは間違いなくこの映画のハイライトですね。
ズシリと響いたセリフがこれ。
「人は多くのことを忘れていくけど、忘れたことはこの世から無くなったりはしない」
こっちが忘れてしまったあの人も。
あの人からみたらこっちが忘れた人。
恋愛とか関係なく、点と線であれば、ほとんどの人と点でしか付き合わないわけで、ほとんど互いに忘れていく宿命にあるということ。
もっと一期一会に敏感にならねばならぬ。
そんな読後感の映画でした。
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