クラフトジン


30歳ぐらいまで、コーヒーといえば、スタバのような、深煎り濃いめのコーヒーかエスプレッソを適当にお湯で割ったシャバいコーヒーしか知りませんでした。ビールといえば、一番搾りかスーパードライかみたいな、のどごし最高!なテンションで味わうビールしか知りませんでした。

それが、ようやく、最近になって、どうやら、それらはコーヒーやビールという文化のごく一部を切り取った姿でしかなく、その裏側には、産地や作り手の個性やこだわりが色濃く反映された味わい豊かな世界が無限に広がっているという真相を知ってしまいました。

あれだけ生活に身近な存在でありながら、どれだけ一面的にしか対象を理解していなかったのかと。思考停止も甚だしかったわけです。

「サードウェーブコーヒー」やら「クラフトビール」やら、目新しい言い回しのせいで、ついつい一過性のブームとして冷やかされがちですが、大量に仕入れて大量に売りさばく流通側の論理によって長ーい年月に亘って覆い隠されてきた、本来は愛でるべきユニークネスがようやく掘り起こされて光を当てられている昨今の現象は、大量消費に辟易した時代の流れに素直に寄り添った本質的な変化として歓迎されるべきだと思います。

ブームやファッションとして表層的に認知し、やり過ごすにはあまりにも惜しい。

で、当然「クラフトジン」という芽吹きも、時代の要請に応じた、健全で必然的な新たなカルチャーなんだと思います。そして僕もご多分に漏れず、その世界に魅了されております。(中目黒のスパイス&ミュージックなカレー屋さんの影響です)

原酒にジュニパーベリーを入れて蒸溜するというルールさえ守れば、あとは全部自由。
原酒にどんな素材を使おうが、どんなボタニカルや果実を蒸溜機に放り込もうが、全て作り手の思うがまま。その実験性の強い世界に、パンクミュージックのような、反骨心の強い、迸る自己表現の炎を見てしまうのです。趣向を凝らしたデザイン性の高いボトルはさながらCDジャケットのそれと同じ心意気を感じます。

しかも各蒸溜所が、拠点を構える地域の文化に根差して、ジンを作っている。
ジンを通じて地域をレペゼンする、その土着性も大きな魅力です。

そうしたインディペンデントで先鋭的なジン作りは、スピリッツ大国のヨーロッパやアメリカばかりで進んでいるものだと高を括っていたら、なんと、国内でも既にその火が灯されているではないですか。

というわけで、行ってきました。
岐阜県は郡上八幡の辰巳蒸溜所。

国内ではおそらく初となる個人による小規模蒸溜所。
立ち上げたのは、国内外の酒作りの現場を渡り歩いてきた、30代の若い蒸溜家。
錬金術師と名乗るその青年が、人里離れた山奥で、日本の名酒を原酒に使い蒸溜するジンやアブサンは、国内を飛び越え、すでにイタリアやスウェーデンなどで高い評価を得ているというから驚きです。次代のカルチャーを担うパイオニアになる気配をひしひしと感じます。

蒸溜所にBARも併設されています。
岐阜周辺に行く際には、ぜひ、訪れてみて下さい。

もちろん、美味しいです。










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